LACOCO COLUMN

スキンケア
2025.11.25
ヒルドイドは本当にやめたほうがいいの?メリットとリスクを見極めて安全に使おう

ヒルドイド(医療用ヘパリン類似物質クリーム)は、日本で広く処方されている保湿薬・血行促進薬です。しかし「やめたほうがいい」という声も目にします。
一方で、研究論文ではその安全性や有効性が裏付けられた報告も少なくありません。本記事では、本当に「ヒルドイドをやめたほうがよいのか」を徹底解説します。

ヒルドイドとは

ヒルドイドは、マルホ株式会社が製造・販売している医療用保湿薬で、主成分に「ヘパリン類似物質」を0.3%含有しています。この成分は、血液の流れをサラサラにする働きをもつ「ヘパリン」とよく似た構造をしており、血行促進や炎症の抑制、皮膚の再生サポートなど、多面的な作用を発揮します。

特に注目されているのが、その高い保湿力と水分保持効果です。ヒルドイドは皮膚の表面を薄い膜で包み込み、水分の蒸発を防ぐと同時に角質層にうるおいを与えます。

このため、乾燥肌やアトピー性皮膚炎、皮脂欠乏症など、肌の乾燥トラブルを改善する目的で幅広く使われています。さらに、動物実験では皮膚バリア機能の修復効果も確認されており、医療現場では保湿剤としての役割を超え、肌の治癒を促すサポート薬としても活用されているのが特徴です。

また、ヘパリン類似物質を配合した市販薬もドラッグストアで販売されていますが、ヒルドイドは医療機関で処方される医薬品です。そのため、自己判断での使用ではなく、医師の診察を受けて症状に合った処方を受けましょう。

ヒルドイドは、以下のような症状や疾患の治療に用いられています。

・血栓性静脈炎(痔核を含む)
・血行障害に伴う疼痛・炎症(注射後の痛みや皮膚の硬化など)
・凍瘡(しもやけ)
・肥厚性瘢痕・ケロイドの治療および予防
・進行性指掌角皮症(手湿疹など)
・皮脂欠乏症(皮脂量の減少による乾燥)
・外傷(打撲・捻挫・挫傷)後の腫れや血腫、腱鞘炎、筋肉痛、関節炎

ヒルドイドは「やめたほうがいい」って本当?

ヒルドイドがやめたほうがいいと言われる理由を詳しく解説します。

顔に塗ると肌がたるむと言われているから

「ヒルドイドを顔に使うと皮膚がたるむ」と聞いたことはありませんか?

この噂は、「ヒルドイドの成分がコラーゲンの生成を抑える」という誤った説明が広まったことが原因のようです。肌のハリはコラーゲンによって支えられているため、「コラーゲンが減る=たるむ」と考えられがちなのですね。

しかし、実際にはヒルドイドを使ってコラーゲンが減ったり、肌がたるんだりするという医学的な根拠はありません。

ヒルドイドの主成分である「ヘパリン類似物質」には、保湿や血行促進の働きがありますが、コラーゲンの生成を止めてしまう作用は確認されていません。

そのため、医師の指示や正しい使い方を守っていれば、「塗るとたるむ」と心配する必要はないでしょう。ただし、肌質や使う量・頻度によっては個人差があるため、自分の肌の状態を見ながら使うことが大切です。

長期使用で副作用が出やすいと言われているから

「ヒルドイドを長く使い続けると副作用が起きやすくなるのでは?」と心配している方もいるでしょう。こうした不安を感じる方は多いですが、現時点の医療データでは「ヒルドイドを長期間使うことで副作用が増える」という明確な根拠は見つかっていません。

確かに、どんな薬でも長く使い続けるうちに、肌の反応が変わることはあります。

例えば、以前は問題なかったのに少しピリピリするようになったり、以前ほど効果を感じにくくなったりするケースです。

これは、肌のコンディションが日々変化しているためで、必ずしも「薬そのものが悪い」わけではありません。

そのため、ヒルドイドを継続的に使う場合は、定期的に皮膚科を受診し、肌の状態に合わせて使用量や頻度を調整してもらうのがおすすめです。

ヒルドイドは使うべき?その判断基準とは

では、そもそも「ヒルドイドを使うかどうか」はどのように決めるべきでしょうか?ここからは、ヒルドイドの本来の目的や適切な使い方などを詳しく解説します。

ヒルドイドの本来の役割と効果

ヒルドイドは、乾燥肌や皮膚が乾きやすい症状を改善するために処方される外用医薬品です。

主にアトピー性皮膚炎に伴うかゆみや、皮脂の量が不足している肌のケアを目的に処方されることが一般的です。

成分である「ヘパリン類似物質」は、保湿だけでなく血行を促す効果や、肌の炎症をなだめる作用を持つため、以下のような効果が期待されます。

・かゆみや炎症を伴う肌荒れを軽減する
・傷跡が盛り上がって残ってしまった部分のケア
・肌の乾燥を防ぎ、水分を保つバリア機能の補助

こうした治療目的での使用には、医師の指示のもとで行うという前提があります。保険適用がされるケースも多く、肌のトラブルを緩和する手段として医療の現場でも活用されています。

美容目的での使用は“おすすめできない理由”

中にはヒルドイドを美容目的で使用したいと考えている方も多いです。しかし、ヒルドイドは医療用の処方薬であり、「美容」目的で使うために設計されたものではありません。

実際、ヒルドイドにはヒアルロン酸やコラーゲンといった美容成分は配合されておらず、肌の若返りやシワ改善、美白などの効果が科学的に証明されているわけではありません。処方薬として認められているのは、あくまで「乾燥改善」や「炎症緩和」などの医療目的に限られます。

そのため、「保湿効果があるから」といって美容感覚で使い続けるのは、リスクを伴うこともあります。むしろ、美容成分を豊富に含む化粧品やスキンケア製品を検討したほうが美容目的には良いでしょう。

さらに、水分が適切に保たれている肌に過度にヒルドイドを使うと、成分の濃度や刺激感が体感的に合わない場合もあり、肌のバランスを崩す恐れがあります。

ヒルドイドの使用をやめたほうがいいケース

ヒルドイドは、医療現場でも広く使われている保湿・血行促進薬です。

乾燥肌やしもやけ、あかぎれなどに効果がある一方で、「肌が潤う」「美容にも良い」といった理由から、近年ではスキンケア目的で使用されるケースも増えています。

しかし、すべての肌トラブルに有効というわけではありません。症状によっては、ヒルドイドの成分が合わなかったり、かえって悪化を招いたりすることもあります。

早速、ヒルドイドの使用を避けたほうがよい代表的なケースについて詳しく解説します。

ニキビの治療薬としては使用できない

「ヒルドイドを塗るとニキビが治る」という情報を耳にしたことがある方もいるかもしれません。しかし、ヒルドイドはあくまで保湿剤であり、ニキビ(尋常性ざ瘡)を直接的に治す薬ではありません。

ヒルドイドの有効成分である「ヘパリン類似物質」には、肌の水分を保つ・血行を促進するなどの働きがありますが、ニキビの原因である毛穴の詰まりやアクネ菌の繁殖を改善する効果はないのです。

そのため、毛穴づまりを解消したり、炎症を抑えたりする成分を含む医薬品(例えば過酸化ベンゾイルやアダパレンなど*での治療が基本となります。

実際に皮膚科では、ニキビ治療薬と併用してヒルドイドが処方されることもありますが、それはあくまで「治療薬の刺激や乾燥を和らげる目的」です。

保湿して肌のバリア機能が整うことで、結果的にニキビの見た目が落ち着くこともありますが、それは副次的な効果にすぎません。

もしニキビが気になる場合は、ヒルドイド単独ではなく、医師が推奨する治療薬との併用や適切なスキンケアを行うことが大切です。

ハンドクリーム代わりでの使用にも注意が必要

ヒルドイドは保湿力が高いため、「ハンドクリーム代わりに使える」と紹介されることもあります。

確かに乾燥を防ぐという点では有効ですが、すべての手荒れに万能というわけではありません。

以下のようなケースでは、ヒルドイドの使用を控えたほうが安全です。

また、医療用医薬品である以上、必ず医師の指示のもとで使用するようにしましょう。

炎症を起こしている場合は使用を避ける

手の甲や指先に赤み・腫れ・熱感などの炎症症状がある場合、ヒルドイドの使用は控えるべきです。ヒルドイドには血行促進作用があるため、炎症部分に塗ると血流が過剰に増え、結果的に炎症が悪化するリスクがあるのです。

例えば、手湿疹やひどいひび割れなどで皮膚が炎症を起こしているときに使用すると、痛みやかゆみが強まることもあります。

そのような場合は、まず炎症を抑えるステロイド外用薬などを使用し、肌の状態が落ち着いてから保湿目的でヒルドイドを使うようにしましょう。

あかぎれ・しもやけには効果的な場合も

一方で、あかぎれやしもやけのように「血行不良によって乾燥や冷えが生じている症状」には、ヒルドイドが有効に働くことがあります。

上記の症状は、指先に十分な血液が行き届かず、皮膚が乾燥してしまうことが主な原因です。

ヒルドイドに含まれるヘパリン類似物質は、保湿作用と血行促進作用をあわせ持つため、皮膚の潤いを保ちながら血流を改善し、回復を助ける効果が期待できます。

ただし、出血を伴うあかぎれの場合は注意が必要です。

血行促進によって傷口からの出血が悪化するおそれがあるため、出血や炎症を伴う部位には塗布しないようにしましょう。

ヒルドイドには副作用もある

医療用の塗り薬として信頼性が高いヒルドイドですが、完全に無害ではありません。利用する前に知っておきたいリスクもいくつか存在します。

例えば、ヒルドイドの成分には血行を促進したり、血液凝固に影響を及ぼしたりする性質があるため、傷口に塗ると逆に出血しやすくなってしまう可能性があります。

さらに、副作用としては、ごくまれに以下のような症状が現れることもあります。

・赤みやかゆみ、発疹などの肌のトラブル
・紫斑(しはん)と呼ばれる、皮膚下にできる内出血のようなあざ

紫斑は、大きさや位置によっては深刻な健康問題を示すサインとなる場合もあるため、気になる変化を見つけたら速やかに医師に相談しましょう。

ヒルドイドは医師と相談しながら使用するのが安心

ヒルドイドは「やめたほうがよい」という意見も耳にしますが「人による」というのが正確な答えです。

まず、ヒルドイドには確かな効果があることが分かっています。主成分である「ヘパリン類似物質」は、肌のうるおいを保ち、血行をよくする働きがあります。

実際に、放射線治療のあとに起こる皮膚の乾燥を改善する効果が確認された研究や、健康な人を対象にした安全性テストでも、大きな副作用は報告されていません。

このように、医師の指導のもとで正しく使えば、安全で有用な薬といえるでしょう。

ただし、注意が必要なケースもあります。

例えば、ワクチン接種後に使うと副作用のリスクが高まる可能性を指摘する報告もあり、またアレルギー体質の人や、出血しやすい人などは慎重に使う必要があります。

また、炎症がある部分や傷口に塗ると、血行促進の作用でかえって症状が悪化することも。

つまり、ヒルドイドは「完全に安全な薬」と言い切ることも、「絶対にやめたほうがいい」と断言することもできません。

自分の肌の状態や体質、使う目的に合わせて、医師と相談しながら使用しましょう!